Chokuchanの読書日記

理系女子大学院生が読書の感想および意見を書いてます。

伏線回収が気持ちいい「かがみの孤城」辻村深月

ここ最近読んだ本の中で一番おもしろかった!

 

ストーリーの設定と7人の人間関係やそれぞれの個性が魅力的で、どんどん読めた。

なにより伏線回収がすごい!

ストーリーの落ちとなる部分は予想した通りだったけど、それまで出されてきたたくさんのヒントにはこころの説明で後からわかって、とても気持ちよかった。

 

わたしは22歳っていう年齢だからか、この本を読んだ目線としては半分子供の気持ち、半分親の気持ちで読んでしまった。

 

主人公のこころの気持ちで読んだとき、この本を小学生の時や中学生の時に読みたかったと思った。

自分と感性によりそった表現がされていたので、共感がもてて勇気が出たと思う。

「『暗黙のルール』を守らなきゃ」とか「浮かないようにしなきゃ」って考えてた。

でも、個性豊かな7人のかがみの孤城のメンバーのように「ふつじゃなくていい」んだろうなぁ。

今の自分の考え方にも響くものがあった。

 

こころの親目線で読んだとき、こころが学校に行かなくなった理由を話した場面、私は涙が流れた。

こころが自分の子だったらと思うと、「ごめんね」とか「がんばったね」とか「話してくれてありがとう」って言いたくて、悔しくて、嬉しくて、こころをぎゅっと抱きしめたくなった。

自分にこどもができた時、なにができるかな。

なにを聴いてあげられるかな。

喜多嶋先生のようなこどもの気持ちに寄りそえる人になりたい。

 

読み終わって、さすが本屋大賞をとった本だなって思った。

辻村さんの作品をぜひまた読みたいし、いろんな人にこの本を読んでほしいと思った。

お金の恐ろしさを感じた「火車」宮部みゆき

はじめて宮部みゆきの本を読んだが、なぜ今まで読まなかったのかと自分を疑った。

ストーリー性、表現法、どちらもすばらしいと感じた。
あえて大きな欠点をいうなら、私がこの本を2021年に読んでいることだった。
当時はクレジットカードが伸び盛りであり、負債に苦しむ若者が大きな社会問題となっていたのであろう。
しかし、この本で述べられている社会問題は形は多少異なるが、現代に通ずるものを感じた。

物語は休職中の刑事が関根祥子という自己破産した女性を探すというものである。

“自己破産”
一見、自分とは無関係に思えるが、実は誰でもなりうる。
自己破産する人々は社会の被害者だ、というのが作者の見解である。
この本を読みながらクレジットカードの利便性について考えさせられるところがあった。

そして私が一番印象的だったシーンは、後に関根祥子に成り済ます新城喬子が、親の借金による取り立てから解放されるために父が死んだ証拠を探しているときにつぶやいてしまった言葉である。
「どうかお願い。頼むから死んでいてちょうだい、お父さん。」
実に重たい言葉である。
この言葉は、彼女の境遇を考えると納得はできるが、共感はできない。共感はしたくない。
それほどまでに彼女は追い詰められていたのだ。
何が彼女を追い詰めたか。それは偏にお金につきるのである。

ストーリーについては予想できない展開でどんどんと進んでいき面白かった。
一つ手掛かりとなるキーを見つけるとまた次のキーが見つかるといった具合に話がつながっていく。
そして話がどんどん広がっていき最後にきゅっと気持ちよくまとまる。

また、話の本筋ではないが、主人公の息子の智がかわいい。足の悪い父を心配する優しく強い少年であった。
この少年のやわらかな描写により、この長編推理小説でもさらっと読むことができるのだろう。


長編小説であり、その時代にタイムリーな話題が主題であったので、読み続けるのが不安だったが最後までドキドキを感じながら読むことができた。
ぜひまた宮部みゆき作品を読みたいと感じさせる本であった。